監督、製作、脚本:バリー・レビンソン 主演:ダスティン・ホフマン、トム・クルーズ
あらすじ
高級輸入自動車ディーラーを経営しているチャーリー(トム・クルーズ)は、ある日、絶縁していた父の訃報を知らされる。
葬儀に参列し、父の遺言として、大事にしていた車を1台と賞を取ったこともあるバラの木を1本。それを相続する。
けれど300万ドルの遺産はチャーリーの知らない受益者に渡されるという。
あまりの仕打ちに納得できないチャーリーは、その受益者が誰なのか、探しに出かける。
そして見つけ出した受益者は、彼もその存在を知らなかった、自閉症の兄レイモンド(ダスティン・ホフマン)だった。
チャーリーは会社の経営が行き詰まっていることもあり、兄の遺産を分けてもらう事ばかりを考えているが、
2人で旅を続けるうちに、自閉症である兄の才能に驚かされる。ばら撒かれた楊枝の数を瞬時に数える、
電話帳に書かれた名前と電話番号を正確に覚えていることなど。
そんなレイモンドにチャーリーは、トランプの数字を覚えることを教え、ラスベガスでのカードゲームで大勝ちをし、
会社での損失を穴埋めすることに成功する。
見どころ:自閉症の兄との関わりによって変わっていく、弟の成長と兄弟としての絆の深さ。
当初は自閉症の兄に対して、怒鳴りつけたり強要するなど、彼の立場に立つどころか、自分の利益になることしか
考えていないチャーリー。けれど彼と時間を過ごすうち、自閉症というものへの理解や、兄というかけがえのない
存在に気づいていく。
それまで自分を中心に物事を考えていたチャーリーが、兄を中心として物事を考えていくようになる。
バーで知り合った女性とデートをする約束をしたレイモンドに、チャーリーはダンスのやり方を教える。
普段は身体に触れられることにパニックを起こす兄が、その時には弟と手を重ね、ゆっくりと動きを合わせていく。
そんな兄に、自分と心が通じ合ったと感じたチャーリーは、思わず兄を抱きしめようとするが、
レイモンドを興奮させ、拒絶されてしまう。
自分の思うように動かず、意思疎通も出来ずお金の価値さえ解らない。そんな兄を当初は持て余す。
けれど兄ほどの才能を持つわけでもなく、会社の経営さえ満足に出来ないチャーリー。
兄よりも自分の方が、よほど社会不適合者なのではないか。
そんな気づきを与えてくれる、かけがえのない兄の存在。
レイモンドに会う前のチャーリーと、その後のチャーリーとは、文字通り人生が変わるほどの時間だったと思う。
人生における一般的なもの…金銭にこだわることや、効率を考えること、人との関わりや、時間のことなど。
チャーリーが考える一般的で、当たり前だと思っていたことが、レイモンドには理解もできず、行動することも出来ない。
レイモンドの当たり前と、自分が考えている当たり前の基準が違うのだ。自分の価値基準に、兄を押し込めることも出来ない。
けれど、それが何だというのだ。これが僕の兄だ。誰よりも弟思いで、誰よりも天才だ。
そんな尊敬と思慕を感じさせる兄。そんな風に思える兄を持っていた自分に誇りを持つ。
そうした兄弟と愛の物語です。